けが人がでなかったことは不幸中の幸いだな。第一報のニュースは全国版だった。下記は容疑者逮捕後の 9 月 23 日付地方版の記事。
> 郵便局強盗、男、容疑で逮捕 「借金返済のため」
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> 某市某町の郵便局で15日、包丁を持った男が現金約1500万円を強奪した事件で、某署などは22日夜、強盗の疑いで容疑者を逮捕した。
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> 調べによると、同容疑者は十五日午後四時四十五分ごろ、同郵便局に押し入ってカウンターを乗り越え、局員に包丁のようなものを突きつけて「金を出せ」と脅迫。局長に、金庫室にあった現金約千五百万円を持参した布袋に入れさせ、強奪した疑い。
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> 同容疑者はギャンブルなどで知人らに百万円前後の借金があり、調べに対し「借金返済のためにやった」と容疑を認めているという。逮捕時は帯封のついた千円札の束など数十万円を所持していた。奪った金の一部は借金返済に充てたとみられるが、残りの使途は不明で、同署は共犯者の有無なども調べている。凶器の刃物は「犯行直後に人けのない場所に捨てた」と供述している。
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> 同署は、同容疑者が事件前、犯行に使われた黒の乗用車を同市内で乗り回していたとの目撃情報を得て、行方を追っていた。車は事件後、現場から約二キロ離れた某市某町の住宅街に乗り捨てられているのが見つかった。同容疑者は某市内などに潜伏していたが、同署が親類などを通じて出頭を促し、列車でJR某駅に到着した二十二日夜に任意同行を求め、容疑を認めたため逮捕した。
上記の容疑者が逮捕された前夜、去る 21 日 22 時過ぎ、僕の自宅に
「某市内などに潜伏していた」
小学校時代の同級生から電話がかかってきた。「もしもし garmonbozia さんですか?俺なんだけど…俺。誰だか分かる?分からない?誰だと思う?俺。俺、誰だと思う?」
わからんちゅうねん。既に 15 日の時点で報道されていた事件の第一報を僕はまだ耳にしていなかった。もちろん、仮にそのとき事件の報道を知っていたとしても、この電話の発信者とコトを結びつける理由も、或いは論拠もなかったわけ。
…通話の際、奴さん (=以下、”ホシ”と呼ぶこととする) が先ごろ、僕の友人 (=以下、”オーナー”と呼ぶこととする) が経営する飲み屋へと足を運んでいたことを告げてきた。それがいつだったのか正確には分からない。ちなみにその友人と僕は数年の間顔を会わせていないのだけど。僕の電話番号と所在は、同日にこれまた小学期の同級だった理容師に散髪してもらい、その際に入手していたものだった。
ホシはほろ酔い的な、うれし懐かしそうな声で
「いやあ、それで今度同窓会催ろうか、なんて話になってさあ」
とか「ひとりじゃ寂しいからさあ、 garmonbozia もお前、今から都心まで来いよお」
などと言っていた。僕はその誘いに断りはしたものの、四方山話にしばらく付き合った。…子供の頃を思い起こしてみれば、ホシは他人に迷惑を掛けることでしかコミュニケーションを図る方法を知らぬといった感じだった。若干極端な表現だけど。幼稚だとは確かにいえるが、ホシのヤツが何かをしでかす度に、そこには悪気が感じられた。僕の知る限り、ホシによる多くの問題行為の一部始終を体験した人間にとっては少なくともそう解釈することが人道一般であったように思う。何故ならホシという一個人によって迷惑を被っていたのが、他ならぬ僕ら自身だったからだ。
ホシは子供の時分からとても気が小さい人間だったが、それでいて女の子や無抵抗な相手に対してはめっぽう攻撃的だった。”弱いいじめっ子”、とでもいおうか。例えていうなら、テレビ朝日のドラマ「菊次郎とさき」にでてくる北野菊次郎の外道バージョン。決してガキ大将のようなタイプのつわものではなかった。体罰全盛の時代、よく小学校の担任教師にホシがしばかれていたのを憶えている。
上記オーナーも小学期に同級だったのだが、当時の或る昼休み明け、教室の全員が既に着席していたなか、ホシが不純で不当で意味不明な動機からオーナーに掴みかかったことがあった。担任は途中から入室済みだったのに何故か何も言わずにその様子を冷視していた。両者は 3 〜 4 分間がっぷりと組み合ったまま暫くのあいだ甲乙つかなかったが、やがてはオーナーから、相撲でいうところの上手投げのような形で至極マイルドかつ完全な負けを喫したホシは、それ以来というものオーナーに対してまるで舎弟の様に従順になった。
僕の母校での卒業を待たずに隣町の小学校へ転校したヤツは、数年が経ち今から 10 数年前、僕の近場の地下街にあるゲームセンターでオーナーとばったり遭遇。オーナーが全く何も要求しなかったにもかかわらず、ホシは手持ちの何箱分もあるゲーム用コイン全てをいきなり謙譲してきたのだそうな。
記憶をもう一度遡り、小学期の或る昼休み、僕はホシの求めに応じてサッカーボールを貸してやったのだが、ヤツはそれをどこかに隠し込んですっ呆け、一向に返却の素振りを示さなかったため下校前のホームルームにて挙手が認められたのちに僕は起立し、
「ええっとぉ、昼休みにホシ君にサッカーボール貸したんですけどぉ。てめえこの野郎ボール返せこの野郎オラァ」
と怒鳴ったところヤツは僕のほうをクルっクルと二度見してそのまま沈黙を保ちやがった。僕は次の日になってもまだボールを目撃できなかったため「てめえこの野郎ホシコラこの野郎ボール返せっつてんだろがこの野郎ボオルよこせっつてんだよっンノヤロオラァ」
と言葉による圧力を加え続けた挙句、下校時に玄関を出てふと眼前のグラウンドに目をやるとボールが転がっていた。ホシは僕に対し一言も残さず、また、その日は即座に姿を消し同件に関してはそのままトンヅラ。僕も上記地下街でホシとばったり遭遇したことがあった。当時はお互い高校生。 (のはず。ホシは在学/卒業していたのだろうか?珍走団には在籍していたそうだが。) 先にホシがこっちに気付いた。
「おお。 garmonbozia じゃない? garmonbozia でしょ?なんか俺の悪口言ってたんだって?ヤろうかと思ったぞ」
とホシはそんな台詞で話しかけてきつつも、全然ヤってこなかった。いや実は、僕の高校にいた或る馬鹿 (=以下、”バカ”と呼ぶこととする) がホシのヤツと中学期の同級で、「garmonbozia、ホシのこと知ってんの?ホシ、今メチャクチャけんか強いよ。こないだホシの蹴り、メチャクチャ痛そうだったもん」
と、余りの愚かさと詰まらなさに憤りすら覚えた会話を申し込んできたため、「ホシなんざただの馬鹿だろ。ガキの頃から自分より強いヤツには殆ど自分からいじめられてたぞ。」
とアホなムードを遮断しておいたら、その旨を今度はアホなバカが悪気を利かせてホシに伝えておいてくれたわけやね。密告したともいい換えられるけども。…で、遭遇時のホシはデニムのオーバーオールに身を包み、「こないだゾクの集会にオーバーオール着てったらよぉ『てめえそんなもん着て気合入ってねえんだよコラァ』って先輩にメチャクチャ怒られた」
ことを報告してくれた。おもしろいね。余談だが、ホシが僕の小学校から転校する前の最後の科目となった体育の授業が終了する際に、通常は児童全員の名を呼び捨てにしていた担任が
「ホシ君は悪者のレッテルを貼られてしまっていたから、良いことをしたい気持ちがあっても行動に移す機会がなかったのだと思います」
と非常に建設的で気前の良いコメントを残した。彼の言ったことが真実だったなら不幸なことだが、それはそれで真実だったのだと信じたいものだ…まあ、そのとき以前に、或る別件ホシ起因問題が発生した際の緊急ホームルーム召集時において僕が「ホシはまた必ず同じような問題を起こすだろうから、俄かな反省論は無意味です」
と述べたところ、よくよく合点がいった様子で「garmonbozia、そのとおりだ」
と力強く合意・納得していた人物もまた、他でもない担任だったのだが。さて、電話での会話はそれはそれなりに楽しいものだったが、ハナシが裏切った女のくだりに差し掛かったあたりで、ホシの携帯の充電が切れたのか突然不通になった。そして奴さんからはそれっきりだ。
次の日の 22 日に、日テレの「おもいッきりテレビ」だったか「ザ・ワイド」あたりでやっていたニュースにより、ホシと同姓同名同年齢の男が郵便局を強盗した疑いで逮捕されていたことを知った。その時点でピンときたりもしたがまあ、現場と僕らの所在の物理的距離を考慮すると「偶然の一致じゃあないのおぉ?いやしかし」みたいのが僕と上記理容師の見解ではあった。現場付近じゃなくてこっちに居たんだよなあ、と。
しかし本稿に記載した 23 日付記事における
「容疑者は某市内などに潜伏していたが」
「列車でJR某駅に到着した二十二日夜に〜容疑を認めたため逮捕した」
のくだりを発見するにつけ容疑者とホシが同一人物である可能性が最大化した。その旨を理容師に問い合わせると、散髪後にホシが料金を支払おうと財布を開いた際に「(逮捕時は) 帯封のついた千円札の束など (数十万円) を所持していた」
のを理容室の同僚が目撃しており、これにて断言に難くないという結論に達し本稿に至る。最低限、15M 円の行き先が証明されない限りお上による調べが続くのだろうから、そうなると既にホシの携帯の通話記録を押さえてあるであろうお上は、そのうちに僕のところにもやって来ることになるんだろうなあ。またしても迷惑なー。参考:
・菊次郎とさき - Wikipedia








